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VALORANT GC公式キャスター・谷藤博美がeスポーツ業界にかける熱意の理由 「涙が出るほど感動した素晴らしさを発信したい」


タクティカルシューター『VALORANT』の競技シーンにおいて、2022年度より始動した「VALORANT Champions Tour Game Changers」(VALORANT GC)。同プログラムは女性プレイヤー限定の大会で、国内からはFENNELとREIGNITE Lilyが世界大会に繋がる切符を獲得しました。両チームは10月12日に行われる「Game Changers East Asia Qualifier」(東アジア大会)へ出場、ベルリンで行われる決勝戦の出場枠をかけて激突します。

そんなVALORANT GCにおいて、国内配信の公式キャスターを務めるのが、富山テレビと北海道放送(HBC)でアナウンサー業務を経験した谷藤博美さん。インタビュー後編となる今回はこれまでの経歴やeスポーツを知ったきっかけ、未経験からeスポーツ業界に飛び込んだ経緯等をお伺いしました。

https://twitter.com/Romitnfj/status/1576868509313032193

※谷藤博美さんインタビュー前編:eスポーツキャスター・谷藤博美が語る『VALORANT』観戦のススメ 「ファンとプレイヤーが一緒に成長できるVALORANT GCに注目」

始まりは3年前 アナウンサー業務の一貫として”eスポーツ”を知った

――谷藤さんのご経歴についてお伺いします。富山テレビにアナウンサーとして入社されたのが2012年なんですね。

谷藤博美さん(以下、谷藤):将来はディレクターやカメラマンになりたくて、学生時代から放送部に入ったりメディアの勉強をしていたんです。それで大学生の頃に「就職活動でアナウンサーになれるらしい」と聞いて。喋るのが面白いということに気づき、アナウンサーを目指して放送局に入りました。

6年半ぐらいは富山テレビで働いて、2017年度からHBCに移りましたね。テレビ局に入ってからは自分でネタを探し、企画会議もこなしながら取材に励んでいました。

――約10年間にわたって放送業界に身を置いていたんですね。現在は『VALORANT』を主にプレイされていますが、最初に触ったゲーム作品等は覚えていますか?

谷藤:最初は家族が「スーパーマリオ」や「ドンキーコング」で遊んでいるのを見ていましたが、自分がおねだりして買ってもらったのは『ダンスダンスレボリューション』だったと思います。あとは「テイルズオブ」シリーズや「テニスの王子様」のアドベンチャーゲームだったり……その頃から音ゲーとRPGが好きでよく触ってましたね。友人と一緒に遊ぶこともたくさんありました。

――ゲーム自体は当時からよくプレイされていたんですね。では”eスポーツ”という言葉を知った経緯を教えてください。

谷藤:eスポーツという言葉を認識したのは3年ほど前だったと思います。その当時、テレビ局でもeスポーツ系のイベントを取り扱う機会がちらほら増えていたんです。なので自分自身が「eスポーツ業界であのプロチームが……」と言うよりは、アナウンサー業務の一貫として、盛り上がりを見せたeスポーツ大会やeスポーツプレイヤーといったものを知り始めました。

試行錯誤の積み重ねで実況スキルを習得 観る側からeスポーツを伝える側へ

――アナウンサー業務の中でeスポーツを知ったと伺いましたが、eスポーツ業界に飛び込んだ経緯を改めて教えてください。

谷藤:きっかけは大きく分けて2つありますが、まず1つはVALORANT GCの女性キャスター募集があったからですね。やっぱり「スポーツ実況=男性」という了見が放送業界にあるので、女性アナウンサーはそもそも実況の訓練をほとんど受けないんです。私もバラエティー・報道・ベンチリポート・ヒーローインタビュー等々を経験しましたけど、実況だけが唯一やったことが無い業務でした。そんな時に自分がプレイしている『VALORANT』でキャスター募集が始まって、「やってみたい!」と応募したんです。

あと、気付いたらVALORANTにどんどんのめり込んでいってたのですが、春に行われた国際大会(2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 – Masters)でZETA DIVISIONが大活躍した時に、初めてeスポーツ観戦で涙がこみ上げるくらい感動したんです。でも、日本の歴史的瞬間を取り上げていたのは限られた媒体だけで、メディアに勤めている中で発信できない悔しさもありました……。

また、より多くの人と感動を共有したい!そんな気持ちも強く芽生えていて。その時に、「VALORANTという素晴らしいタイトルでたくさんの選手が活躍しています」というのを発信する側になりたいと思った気持ちも大きいかもしれません。eスポーツ業界でチャレンジしたいと思い立った時、VCT GCのキャスター募集とタイミングが重なったのが踏み込んだ要素かもしれないです。

――オーディション素材は『VALORANT』のプレイ動画をご自身で実況する……といったものでしょうか。

谷藤:そうでしたね。それまで『VALORANT』の実況をやったことが無いし、実況スキル自体も習得していませんでした。だから、過去のVCTキャスター陣の実況を自分で書き起こすところから始めたんです。皆さんが試合中に何を喋っているのか。それぞれの違いを確認しつつ、場面説明や言い回しを分析しながら自分なりに落とし込んでいきました。

谷藤さん手製の練習ノート。枠内には各エージェントやアビリティの名称がぎっしりと書き込まれている

――まさしく試行錯誤の積み重ねだったのですね。実際にキャスター業務が始まってから苦労した点はありますか?

谷藤:自分でプレイしている時は各エージェントのアビリティ名を意識したことが無かったのですが……実況時はアビリティ名を正確に読み上げる技術も求められました。私はピックプールが狭い方だから、キャスター応募する際にエージェント19名のアビリティを初めて知ったぐらいで。それで受験生のごとく、ノートにアビリティ名をひたすら書く毎日が始まりました(笑)。

試合中も不安なので資料を置こうと思いましたが、キャスターの皆さんに聞いたところ、「何も見ていません。すべて頭に入っています」という風に伺って。資料を見ている暇は無いと認識を改めましたね。

――谷藤さんを含め、キャスター陣の皆さんは見えないところで努力されていますよね。

谷藤:私はもう資料があり過ぎて机の中が溢れかえっていますね。男性陣の凄さを再確認しました。

出演者とスタッフが一丸となって作り上げた試合中継 2日間で200ラウンドを実況

谷藤:苦労した点で言えば、”キャスター合格”と連絡を頂いてから1週間後に本番を迎えたことも感慨深いです。

――eスポーツ実況が未経験の状態から、僅かな期間で本番に挑んだのですね。

谷藤:面接は実践で行われたんですが、あまり上手くいかなかったんです。なので私の中では落ちたと思っていた頃、本番1週間前に「受かりました」という連絡が届いて驚きました。合格の理由が気になりましたが、「アカウントレベルが高かったし、本当にVALORANTを楽しんでいるのが一番伝わった」と言ってもらえて本当に嬉しかったです。自分の練習方法とスタジオの環境が違ったこともあり、前日のリハーサルも調整してくださいました。

――プライベートでやり込んだ分が良い結果に繋がったと。環境が違うというのは具体的にどの部分でしょうか。

谷藤:普段『VALORANT』をプレイする時って、おそらく正面にモニターがありますよね。でもキャスター席のモニターは斜め下にあるんですよ。些細な違いに見えて、普段と視野が異なるのでキルログとマップ情報が同時に入ってこないんです。座ったままだとモニター全体が視界に収まらないので、当日はずっと立ったまま実況しました。

リハーサル時も夜中12時ぐらいまでスタッフさんが付き合ってくれて。そこで気づいたのですが、YouTubeはテレビと比べて少人数で回していると思う方が意外と多いかもしれませんが、私が担当していた情報番組よりもスタッフさんの数がめちゃくちゃ多くて。どの方々も知識が豊富だし、キャスター陣との信頼関係も厚い。『VALORANT』好きが集まって良いものを作ろうとしている雰囲気が現場からすごく伝わってきました。だからこそ相応のプレッシャーを感じましたが、私もチームの一員として良いものを『VALORANT』ファンに届けたいと改めて思いましたね。

VCT Game Changers Japan – Final

――スタッフ陣のご協力があってこそスムーズな放送が成り立っているのですね。一緒に出演されたキャスター陣から頂いたアドバイス等で印象的なものはありますか?

谷藤:最初は「楽しむのが大切」と言って下さったんですけど、日を重ねてから「昨日より良くなった」とスタッフさんやキャスター陣に言って貰えたのが嬉しかったです。あとは「2日間で200ラウンドを実況できたのは相当レアだよ」と言われて思い出したのですが、VALORANT GCの実況時は冒頭からずっと喋っていたし、初めての体験だったこともあり水を飲む余裕も無くて……。テレビ局時代とはまた違った大変さがあったと思います。

VCT GCの実況に専心 eスポーツ業界を目指す人々の道を作りたい

――谷藤さんが直近で達成したい目標やチャレンジしたいことについて教えてください。

谷藤:まずは直近の東アジア大会をはじめ、VALORANT GCでキャスター業をしっかりやり遂げたいです。日本語ではなく現地の映像(英語)が送られてくるので、自分が普段見ている『VALORANT』と少し違うというのを意識しつつ、海外のスイッチャー(試合中の映像を切り替えるスタッフ)の癖も掴んだ上で実況をする必要がある。そして前回よりも成長した姿を皆さんにお見せしたいです。

――今後のキャリアで言えば、やはりeスポーツ業界が中心になっていくのでしょうか。谷藤さんの数年後のビジョンが気になります。

谷藤:自分でも模索段階ではありますが……いずれは「女性eスポーツキャスターと言えば谷藤さんだよね」って顔を思い浮かべてもらえる1人になれたら嬉しいとは思います。司会やコメンテーターは女性の活躍も目立つのですが、(女性の)実況者は本当に少ないし、今でも自分がさせて頂けることが信じられないです。なのでeスポーツ業界に女性の人材が増えてくれると頼もしいし、そうした方々の活躍の場がもっと広がってくれると嬉しいです。

eスポーツに関わる仕事は何でも挑戦させてください!という気持ちもある半面、今は業界全体が盛り上がって欲しい気持ちの方が強くて。私が目立つと言うより、実況をしながら選手の方々を取材して魅力を引き出したい。eスポーツ応援団長じゃないですけど、eスポーツ業界を盛り上げる歯車の一つとして、盛り上げる場面に携わっていたいと思います。

――eスポーツシーン全体を盛り上げる縁の下の力持ち……といったイメージでしょうか。

谷藤:そうですね。もし女性の方で「eスポーツキャスターをやりたい!」という人がいれば、「私はこうやってチャレンジしたよ」みたいなアドバイスができる側になりたいです。私が岸さんやOooDaさんに相談したみたいに、これからeスポーツ業界に飛び込みたい人に少しでもアドバイスを伝えたり、後進のために道を作ってあげたいです。

それに女性eスポーツキャスターというものを業界に印象付けることができれば、興味を持った人たちが後を追いやすくもなる。そのためにも、まずはeスポーツキャスターとしてVALORANT GCの実況をやり遂げて今後に繋げたいですね。

――大げさかもしれませんが、女性eスポーツキャスターという道は谷藤さんの双肩にかかっているのかもしれません。最後に読者の方々へメッセージをお願いします。

谷藤:本当に一番お伝えしたいのが、『VALORANT』コミュニティの皆さんが女性キャスターを迎え入れてくれたことに対する感謝の気持ちです。FPSは競技シーンにおいて歴史があるだけでなく、男性キャスター陣の実績も十分に蓄積されている。そんな中にプロゲーマーでもないFPS未経験からスタートの自分が飛び込んでいくのは大きな不安やプレッシャーがありましたが……実況が終わった後にTwitterや配信等で色んな方々から温かいお言葉を頂きました。大変励みになっています。

現在もまだまだ手探り状態ですが、取材やキャスター業を通してeスポーツの魅力を発信しつつ、まだまだ知らない楽しみ方を皆さんと一緒に探したいと思っています。これからもよろしくお願いいたします!

まとめ

放送業界から一念発起、eスポーツの魅力と感動を発信するべくVCT GC公式キャスターを志した谷藤さん。パーソナルな一面に迫った後編に加え、『VALORANT』の魅力についてたっぷりと語って頂いたインタビュー前編も必見の内容です。『VALORANT』ファンの方はぜひ前後編をチェックして頂いた上で、10月12日18時より始まるVALORANT GC東アジア大会もお見逃しなく!

編集:eスポーツニュースジャパン編集部/龍田優貴

VALORANT Champions Tour JAPAN
@valesports_jp

谷藤博美 Twitter
@Romitnfj

谷藤博美 Twitch
https://www.twitch.tv/tnfjromi

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