【コラム】Champions王者から3年、Evil Geniusesはなぜ消えるのか?VCT「32枠」時代の現実
北米の老舗eスポーツチームEvil Geniuses(EG)は10月20日、11月2日付で競技活動と日常業務を終了すると発表しました。1999年の創設から25年以上続いた組織が幕を下ろします。
同チームCEOのクリス・デアポロニオ氏は声明で、スポンサー獲得の難しさとトップレベルで戦うためのコスト上昇を理由に挙げ、「現在の環境では責任ある形で事業を続けられない」と説明。声明は触れていませんが、直前に出た『VALORANT』の世界大会「VCT」のパートナー選考の結果も無関係ではないとみられます。
25年以上の歴史を持つ北米の名門
EGは1999年、カナダで『Quake』のプレイヤー5人によって結成されました。2015年には『Dota 2』の世界大会「The International」で優勝し、2022年には『League of Legends』の北米リーグLCSで春季スプリットを制覇。2023年の「VALORANT Champions」では、北米チームとして初めて同大会を制しました。
一方で、同年はCEOの交代や相次ぐ人員削減に揺れ、11月にはLCSからの撤退も決まっていました。その後は『VALORANT』を軸に再建を進め、事業の安定化や評価の回復に取り組んできたといいます。
「パートナー」の座が持つ意味
本事例の鍵となるのが、VCTの「パートナー制度」です。Riot Gamesは2023年から、選んだチームに国際リーグへの出場権を保証し、収益を分配してきました。EGも南北アメリカ地域を対象とするVCT Americasで、当初からパートナーを務めています。
しかし、この制度は2027年から大きく変わることが既に発表されています。大会はオープン予選を軸にしたトーナメント形式に移行し、パートナーは2年ごとの選考制に。枠は各地域10チームから8チームへ、4地域合計で40から32に減ります。
新制度ではパートナーでも開幕大会「Kickoff」以外は予選を勝ち抜く必要があるが、毎年の基本報酬や、ゲーム内で売られるチーム専用アイテム「チームカプセル」の収益はパートナーだけが得られます。Riotは2025年、デジタルアイテムの売上から8600万ドル以上をチームに分配したと公表しており、選ばれるか否かで収入は大きく変わるでしょう。
10月18日ごろから各チームが選考結果を相次いで公表し、VCT AmericasではLOUD、Sentinels、NRG、100 Thieves、G2 Esportsなど8チームの顔ぶれが報じられました。22日にRiotが正式発表した32チームにも、EGの名前はなく、19日には、VCT EMEA(欧州・中東・アフリカ)で戦うウクライナのNAVIも、2026年シーズンをもってパートナーとしての活動を終えると明らかにしています。
撤退を選ぶチームと戦い続けるチーム
アジアでは、VCT PacificのパートナーだったインドのGlobal Esportsが10月19日、競技活動から退くと表明。2026年のVCT Pacific Stage 2を制した直後の決断で、今後はGE Studiosとしてコンテンツ制作とAI関連事業に注力する模様です。ただし同チームは、2025年11月の時点で2026年が最後のシーズンになる可能性をRiotに伝えていたと説明しており、枠の縮小だけが理由とは言い切れません。
一方、パートナーから外れても撤退するとは限らないの事実です。北米のCloud9や日本のDetonatioN FocusMeは、オープン予選から競技を続ける方針を示しており、NAVIも下部組織のNAVI Juniorで活動を継続するようです。
それでも、財務に余裕のない組織にとって安定収入を失う影響は大きいでしょう。VCTとは別件ですが、9月には北米のComplexityも資金難から23年の活動に幕を下ろしており、北米の老舗を取り巻く環境は厳しいと言わざるをえません。
EGの『VALORANT』部門の選手は、VCTの2026年シーズンの契約が切れる11月2日から他チームと契約できます。パートナー枠の縮小は、経営の苦しいチームの撤退を後押しする一方で、大規模な移籍市場も生みつつあるのです。
執筆:eスポーツニュースジャパン






