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【コラム】なぜ初の国外開催にパリが選ばれたのか。Esports World Cupが証明するフランスのeスポーツ戦略


サウジアラビアを初めて離れ、フランスの首都パリで開催されることになった「Esports World Cup(EWC)」は、世界のeスポーツ界における勢力図を塗り替える象徴的なイベントとなります。

EWCでは7月6日から8月23日までの長期間にわたり、24におよぶゲームタイトルのトッププレイヤーたちがパリに集結。栄光と総額7,500万ドルという巨額の賞金プールをかけて激突します。

単一タイトルから複合型メガイベントへと舵を切るパリの挑戦

パリはこれまでにも「RLCS Major」(ロケットリーグ)「VCT Champions」(VALORANT)「Evo France」(対戦格闘ゲーム)といった世界規模の主要大会を相次いで成功させてきた実績がありますが、今回のEWCはそれらとは全く異なる質の試練となるはずです。なぜなら、単一のゲームタイトル(もしくはジャンル)を扱う従来のイベントとは異なり、200以上のクラブと数千人のプレイヤー、そしてスポンサーやメディア、ファンの視線が一堂に集まる複合型の大規模イベントだからです。この急遽決定した大舞台を成功へと導くことができれば、eスポーツハブとしてのパリのステータスは、より新しいレベルへと引き上げられるのではないでしょうか。

近年のeスポーツ大会において、7週間にわたって各試合で専用の配信や報道が行われるEWCほどの規模を持つものは他にありません。多くのゲーム会社は単一タイトルの世界大会の運営形式を完成させていますが、複数のタイトルを同時に扱う複合イベントの運営は全く新しい挑戦です。サウジアラビアが前身のイベントを含めて3年間かけて洗練させてきたこのシステムを、パリは11月末の「Esports Nations Cup」までスケジュールが過密な中で引き継ぎ、急ピッチで成功させなければなりません。もしこれが実現すれば、パリは業界規模のeスポーツを長期にわたって開催できる都市として世界に認められ、実質的にリヤドと肩を並べるとともに、上海やソウルといった既存の主要eスポーツ都市が持つ名声をも手に入れることになります。

フランス流コミュニティがEWCに生み出す真のシナジー

フランスとパリがこれほどの国際舞台へと躍り出た背景には、ここ数年で着実に築き上げてきた強固なインフラがあります。国が掲げる「eスポーツ戦略」のもとで、運営組織やゲーム会社、代理店、クラブ、そしてそれらを支える公的機関が一体となった体制を構築してきました。

特に今回のEWC誘致においては政治的な支援が決定的な役割を果たしており、Esports Foundation(非営利団体)の最高経営責任者であるラルフ・ライヒャルト氏とエマニュエル・マクロン大統領の面会を機に、オリンピック関係者をも巻き込んだプロジェクトが立ち上がりました。

こうしたトップレベルの支援だけでなく、ビザ取得の障壁を下げるためのプロeスポーツ選手向け特例雇用の枠組みや、イベントチケットの付加価値税を5.5%に引き下げる経済的措置など、実務面での法整備も注意深く進められてきました。パリが第一候補に選ばれたのは、フランスが約11年間にわたり積み上げてきたこれらの基盤の成果に他なりません。

一方で、政策だけでは決して構築できない重要な要素が、フランスの誇る熱狂的なeスポーツファン層です。フランスの観客はあらゆるゲームタイトルにおいて会場をまるでお祭りのように盛り上げ、伝統的なスポーツに匹敵する熱気を作り出すことで知られています。

この強力なファン文化の根底には、コンテンツクリエイターと競技シーンとの自然な結びつきがあります。すでに高い人気を獲得していたインフルエンサーたちが、自身のイメージやコミュニティをベースに「Karmine Corp」などの独自クラブを立ち上げ、彼らのeスポーツに対する情熱がファンを惹きつけ続けているのです。こうした熱量に満ちた観客の存在は、サウジアラビアが制作クオリティの高さを証明しつつも再現しきれなかった、自然発生的な盛り上がりと熱気をEWCにもたらすことになります。

「eスポーツの首都」の称号は誰の手に。プレッシャーを跳ね除けるパリの実行力

また、デジタル中心のファン層にとって重要な時差の面でも、パリ開催は多くの欧米の視聴者、特に影響の大きい米国標準時の視聴者にとって有利に働くため、主催者が試合の配置をどうコントロールするかも注目されます。

それでは、パリが世界唯一の「新たなeスポーツの首都」になるのかといえば、市場が細分化されている現代においては単一の都市がその称号を独占することは困難だと言えます。上海やソウルは今後もアジアの重要拠点であり続け、ヨーロッパ内でもベルリンやマドリード、ケルンがそれぞれの役割を分担しており、リヤドも巨額の投資でその地位を狙っています。

しかし、リヤド以外で初めて「7週間に及ぶイベントの開催」という極めて稀な機会を与えられたパリが、短い準備期間と物流のプレッシャーを跳ね除けて高い動員数とともに大会を成功させれば、その信頼性とインフラの質の高さは決定的なものとなります。フランスが長年かけて築いてきた基礎が本物であるかどうかは、これからの具体的な実行力にかかっています。

執筆:eスポーツニュースジャパン

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