【東京eスポーツフェスタ2026】「本気で遊ぶことが明日を変える」トヨタと連携したレーシングプロジェクトから、サウジアラビアとの国際協力まで。福祉の常識を塗り替える“バリアフリーeスポーツ”の現在地【レポート】
2026年1月9日から1月11日まで、東京ビッグサイトにて「東京eスポーツフェスタ2026」が開催されました。
東京eスポーツフェスタ2026は、eスポーツの普及と関連産業の振興を目的として、東京都などが主催する国内最大級の総合イベントです。2020年の初開催から数えて今回で7回目を迎え、2026年1月9日から11日までの3日間、東京ビッグサイトを舞台に開催されています。

『ストリートファイター6』や『eFootball』、『ぷよぷよeスポーツ』などゲームタイトルを採用した「東京都知事杯eスポーツ競技大会」をはじめ、公式アンバサダーを務める「スタンミじゃぱん」さんによるトークショー等、eスポーツの多角的な発展を象徴する内容となりました。
また、産業振興の側面も強く、都内の中小企業や教育機関などが約50のブースを出展して最新の技術やサービスを披露。eスポーツ関連団体ならびに企業陣による発表を含め、ビジネスデイ(1日目)には企業間の交流を促すセミナーも行われました。

本稿では、東京eスポーツフェスタ2026/1日目に催されたテーマセッション「eスポーツの教育的・社会的価値」の模様をレポート形式でお届けします。
「大航海時代 Online」の授業がもたらした20年後の充実度。社会を生き抜く「非認知能力」とeスポーツの蜜月関係
本セミナーでは、日本eスポーツ教育協会の馬場 章氏と株式会社ePARAの加藤 大貴氏により、教育現場における活用と障害者の社会参画という二つの側面からeスポーツの重要性が論じられました

日本における青少年の教育課題として、先進国の中で著しく高い自死率や自己肯定感の低さが挙げられており、これらを解決する手段としてeスポーツを通じた「非認知能力」の育成が注目されています。

非認知能力とは、テストの点数のような数値化が困難な、人間が社会で生きていくために必須となる力のことです。北米のNASEF(国際教育eスポーツ連盟ネットワーク)などの団体は、eスポーツがDX(デジタルトランスフォーメーション)人材やグローバル人材の育成に貢献すると提唱していますが、馬場氏はこれらが単なる部活動に留まっている現状を指摘。「eスポーツをより正式な教育課程や教科の単元に組み込むべきである」と言及しました。
続いて馬場氏は、教育効果の科学的根拠について、20年間にわたる長期的なパネル調査の結果を提示しました。2000年代半ばに高校の社会科授業で『大航海時代 Online』を使用したクラスでは、通常の授業を受けたクラスと比較して、20年後の生活の充実度や目標を持って生きる姿勢において顕著に高い数値が示されました。

また、ゲームを活用した授業の直後には、学年で最低だった社会科の平均点が最高得点に跳ね上がるという学力の向上効果も見られました。eスポーツは、文部科学省が掲げる「学びに向かう力」や「思考力・判断力」といった新しい学力観を同時に解決できる可能性を秘めており、すでに情報科や体育の授業での活用、さらには「総合的な探求の時間」でのテーマ設定など、教育課程を社会に開放する動きが始まっています。
視覚障害者と健常者が目隠しで対決「心眼パーティー」に見る、真のバリアフリー
「バリアフリーeスポーツ」を提唱する株式会社ePARAの加藤氏は、年齢、性別、国籍、そして障害の有無に関わらず誰もが活躍できる社会の実現に向けた取り組みを報告しました。

加藤氏は自身の福祉現場での経験から、高いPCスキルや言語能力を持ちながらも、適切な活躍の場がないために低賃金での就労を余儀なくされている障害者の現状を課題として捉えました。eスポーツができるということは、PC操作や円滑なコミュニケーション、目的遂行能力が備わっていることの証明であり、彼らがリモートワーク人材として企業に評価されるための強力な”仮説”となります。
具体的な社会的価値の創出事例として、トヨタ・モビリティ基金と連携した「クロスライン」プロジェクトでは、移動に困難を抱える人々がレーシングゲームを通じて互いを尊敬し合う関係性が築かれました。

また、格闘ゲーム『ストリートファイター6』を用いた「心眼パーティー」では、視覚障害者が「音」による情報保障(サウンドアクセシビリティ)を駆使して健常者と対等に、あるいは目隠しをした条件で共に戦うという、障害の壁を完全に取り払った光景が実現しています。このような活動はサウジアラビアの団体とも連携が進んでおり、国際的な広がりを見せています。

今後の課題として、eスポーツを単なる娯楽として提供するのではなく、就労支援や社会課題の解決に繋がる明確なエビデンスを積み上げていくことが求められています。2023年末に厚生労働省が出したガイドラインにより、安易なeスポーツ導入による福祉事業所の開設には厳しい目が向けられていますが、加藤氏はこれを「社会課題を解決し、就労に繋げる」という本来の目的を見直す好機と捉えています。eスポーツは、本気で遊ぶことで明日を変えるという挑戦の連鎖を生み出し、孤独を解消して人々を繋ぐ新たな社会インフラとしての価値を確立しつつあります。

東京eスポーツフェスタ2026 公式サイト
https://tokyoesportsfesta.jp/
東京eスポーツフェスタ2026 公式X
https://x.com/esportsfesta
東京eスポーツフェスタ2026 公式Youtube
https://www.youtube.com/@東京eスポーツフェスタ
執筆:eスポーツニュースジャパン編集部





